社労士事務所アソシエ通信2019年11月号-その他の話題

 事務所通信11月号に掲載した以外の話題をこちらでご紹介しております。

目次

平成30年度 長時間労働の実態

~厚生労働省「長時間労働が疑われる事業場に対して監督署が実施した監督指導の結果」より

◆平成30年度の監督署指導結果が公表

厚生労働省は、長時間労働が疑われる事業場に対して、平成30年4月から平成31年3月までに労働基準監督署が実施した監督指導の結果(改正労働基準法等の施行前の法令に基づくもの)を取りまとめ、公表しています。この監督指導は、各種情報から時間外・休日労働時間数が1カ月当たり80時間を超えていると考えられる事業場や、長時間にわたる過重な労働による過労死等に係る労災請求が行われた事業場を対象としたものです。

◆40.4%の事業場で違法な時間外労働

公表された情報によれば、監督指導実施事業場29,097のうち、11,766(40.4%)で違法な時間外労働を確認し、是正・改善に向けた指導を行ったそうです。このうち時間外・休日労働の実績が最も長い労働者の時間数が月80時間を超えるものが全体の66.4%、100時間を超えるものが44.3%、150時間を超えるものが約10%という結果が出ています。

◆労働時間の適正な把握に関する指導状況

また、監督指導を実施した事業場のうち、4,752事業場について、労働時間の把握が不適正であることから、厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」に適合するよう指導したとしています。指導事項としては、「始業・終業時刻の確認・記録」が2,688事業場、自己申告制による場合の「実態調査の実施」が2,154事業場、「自己申告制の説明」が296事業場、「適正な申告の阻害要因の排除」が244事業場となっています(指導事項が複数の場合、それぞれに計上)。

◆今後も積極的に実施される長時間労働是正に向けた取組み

厚生労働省は、11月の「過重労働解消キャンペーン」期間中には、重点的な監督指導を行うとしています。今後も長時間労働是正に向けた取組みはますます強化されることと思いますので、自社の労働時間の実態、管理方法等を今一度確認していく必要があるでしょう。

 

■労働者不足への対処法~労働経済動向調査からわかる他社の取組み

厚生労働省から、「労働経済動向調査(2019年8月)」の結果が公表されました。同調査は、景気の変動が雇用などに及ぼしている影響や今後の見通しについて調査し、労働経済の変化や問題点を把握することを目的に、四半期ごとに実施しているものです。

今回は、特別調査項目として挙がった「労働者不足の対処方法」について取り上げ、労働者が不足していると回答した企業が、人手不足対策として、どのような取組みを行っているのか、みていきます。

◆トップは『正社員等採用・正社員以外から正社員への登用の増加』

現在、労働者が不足していて、かつ、過去1年間に何らかの「対処をした」事業所の割合は70%、今後1年間に「対処をする予定」の事業所の割合は66%でした。対処策としては、過去1年間・今後1年間とも『正社員等採用・正社員以外から正社員への登用の増加』の割合が最も多く挙がりました(過去1年間:63%、今後1年間:61%)。

ほかには、「臨時、パートタイムの増加」(過去1年間:44%、今後1年間:44%)、『派遣労働者の活用』(過去1年間:40%、今後1年間:36%)、『配置転換・出向者の受入れ』(過去1年間:24%、今後1年間:23%)が続いています。

◆賃金アップよりも社員の働きやすさを重視?

賃金以外の在職者の労働条件の改善として、休暇の取得促進、所定労働時間の削減、育児支援や復帰支援の制度の充実などに取り組んでいます(過去1年間:63%、今後1年間:34%)。これら労働条件の改善は、前回調査(2018年8月)と比べると上昇幅が最も大きく(前回:24%、今回:34%)、企業は、社員が働きやすい環境の整備に力を入れているようです。

上昇幅では上記賃金以外の在職者の労働条件の改善がトップでしたが、次いで『在職者の労働条件の改善(賃金)』(前回:29%、今回:33%)が、ほかに『離転職の防止策の強化、又は再雇用制度、定年延長、継続雇用』(前回:34%、今回:38%)なども上昇しています。

◆その他の対策は?

『求人条件(賃金、労働時間・休暇、学歴、必要資格・経験等)の緩和』(過去1年間:63%、今後1年間:31%)、『省力化投資による生産性の向上・外注化・下請化等』(過去1年間:63%、今後1年間:31%)も対策として挙がっています。

 

外国人と日本人の賃金格差が明らかに

~パーソル総合研究所調査より

人口減少、労働力不足の一助として、外国人材の活用が進んでいます。また、人材の多様化の推進に取り組む企業が採用を進める人材として、女性活用に続いて、外国人活用をあげているという調査結果(エン・ジャパン調べ)もあります。

今回は、総合人材サービスの株式会社パーソル総合研究所が実施した、「外国人雇用に関する企業の意識・実態調査」結果において注目すべき点を取り上げます。

◆調査結果

【外国人と日本人の賃金格差と離職率】

外国人材の職種としては、「専門的・技術的職業」が43.2%と、「販売」(9.8%)や「管理的職種」(9.4%)と比較すると圧倒的に多いことがわかります。

今回の調査で最も注目すべき点として、外国人と日本人の賃金格差が明らかになったことがあげられます。外国人正社員の給与(月収)について、外国人の平均36.6万円に対し、日本人は41.2万円と4.6万円の差があることがわかりました。

また、外国人の離職率については、外国人と日本人の賃金格差が小さいほど離職率も低く、格差が大きいほど離職率が高いこともわかりました。

◆外国人雇用の今後の動向

既に外国人雇用をしている企業では、さらに外国人の雇用を拡大する意向が約7割あり、雇用形態別でみると、正社員雇用している企業で73.7%、パート・アルバイト雇用している企業で67.4%、技能実習生を雇用している企業で71.9%が拡大する意向を示しています。

また、既に外国人雇用をしている企業の41.2%が、人材確保対策の優先順位として「外国人採用・活用強化」を最優先としてあげていて、「中途採用の促進」を押さえて1位となっています。一方、現在は外国人雇用をしておらず、今後検討するとしている企業では、9.2%の企業が最優先としてあげていて、12位の優先順位となっています。

【特定技能の雇用】

2019年4月施行の改正入管法で新しく始まった在留資格「特定技能」について、対象となる14業種に属する企業に尋ねたところ、「検討していない」45.2%、「よく知らない」18.4%と、6割超の企業が消極的で、「検討している」は34%、「既に雇用している」は2.4%にとどまりました。

外国人雇用をめぐっては、送り出し機関や管理団体等関連団体の不正や外国人労働者の自殺・失踪等、ブラックな問題は根深くありますが、企業が適切な雇用対応をすることで、外国人従業員も安心して安全に働け、結果的にタイバーシティの効力につながるのではないでしょうか。

 

新たに建設業、メディア業の実態を調査~過労死等防止対策白書

政府は、令和元年版の「過労死等防止対策白書」を公表しました。「過労死等防止対策大綱」では、長時間労働などの問題から、特別調査をする業種を定めています。今年は新たに重点業種として、建設業とメディア業の調査分析結果が記載されました。

そこで浮き彫りになったのは、建設業では現場監督として働く人たちがうつ病などの精神疾患となり、自殺に至るケースが多いこと、また、メディア業では20~30代の若い世代に精神疾患による労災認定が多いことでした。

◆建設業では現場監督に過労自殺集中

白書によると、建設業では2010年1月~2015年3月に311人が労災認定され、132人が過労自殺(未遂を含む)でした。中でも現場監督として働き、精神疾患となって労災認定された人は59人で、このうち半数以上の30人が自殺していました。59人が抱えていたストレスの要因としては「長時間労働」が最も多く挙げられています。

国内では東日本大震災後の復興事業などで全国的に建設需要が伸びています。一方、建設業で働く人の数は減り、昨年はピーク時より26%少ない503万人でした。人手不足のなか、過重な労働環境に追い込まれていった人が多いのではないかとみられています。

労働時間をみると、建設業の現場監督は、6人に1人にあたる16.2%が週60時間以上。月換算すると、労災認定の目安である「過労死ライン」の残業80時間を超過する水準でした。建設業全体では、9.9%が60時間以上。現場監督以外の職種別では、施工管理や設計士など「技術者」は7.1%、現場で作業する「技能労働者」は3.5%でした。

◆メディア業では若い世代に過労自殺集中

2010年1月~2015年3月で、広告会社や放送局、新聞社、出版社などのメディア業では、ディレクター、プロデューサー、記者ら計52人が労災認定されました。このうち精神疾患で労災が認められたのは30人で、うち4人が過労自殺でした。30人中19人が20~30代の若手で、過労自殺した4人も全員が20歳代でした。背景にあるストレスは、長時間労働や仕事量・質の変化、上司とのトラブルが多かったとされています。

労働時間を見ると、メディア業は週60時間超が2.9%でした。放送業が最多の3.9%で、広告は2.5%。新聞では2%、出版で1.3%でした。

◆民間企業全体では過労自殺減少するも、いまだ高い水準

過労死等防止対策大綱では労働時間が週60時間以上の労働者の割合を2020年までに全体の5%以下にする目標を掲げており、2018年の全業種平均は6.9%でした。2018年度の民間企業における過労死や未遂を含む過労自殺は計158件。2017年度から17%減少しましたが、いまだ高い水準にあり、一層の対策が望まれます。

 

■令和元年版 労働経済白書の要旨

◆ポイントは「働きやすさ」と「働きがい」

厚生労働省は、「令和元年版労働経済の分析」(以下、労働経済白書)を公表しました。今回の労働経済白書では、人手不足下での「働き方」について、「働きやすさ」と「働きがい」の観点から分析が行われています。多くの企業が人手不足を緩和するために、求人条件の改善や採用活動の強化などの取り組みを強化している一方で、「働きやすさ」や「働きがい」を高めるような雇用管理の改善については、さらに取り組んでいく必要があるとしています。

◆賃金は増加の傾向

2018年度の現金給与総額(月額)は、5年連続の増加となりました。一般労働者の名目賃金およびパートタイム労働者の時給も増加しています。白書によると、人材確保のために7割近くの企業が「求人募集時の賃上げ」や「中途採用の強化」を行っています。
しかし、それでも多くの労使が人手不足による職場環境への影響を感じており、「働きやすさ」、「働きがい」の低下を実感しています。「働きがい」を向上させるためには、その前提として「働きやすさ」の基盤がしっかりと構築されていることが重要です。「働き方改革」を両観点から、より一層推進していくことが、人手不足を緩和していくことに繋がります。

◆「働きやすさ」のカギ

男女、年齢を問わず、働きやすさの向上には「職場の人間関係やコミュニケーションの円滑化」が必要であると考えている労働者の割合が最も多く、次いで「有給休暇の取得促進」、「労働時間の短縮や働き方の柔軟化」が多くなっています。15~44歳の女性にとっては「仕事と育児との両立支援」も働きやすさに関する重要な要素です。有給休暇の取得促進や労働時間の短縮、働き方の柔軟化などの雇用管理が、従業員の働きやすさの向上、離職率の低下、新入社員の定着率の上昇につながると考えられ、企業に対応が求められるところでしょう。

◆「働きがい」をもって働くために

「働きがい」を高めるには、職場の人間関係の円滑化や労働時間の短縮などに加えて、上司からの適切なフィードバックやロールモデルとなる先輩社員の存在を通じて、将来のキャリア展望を明確化することが重要です。また、質の高い「休み方」(リカバリー経験)が疲労やストレスからの回復を促進し、「働きがい」を高める可能性があることにも注目です。「働きやすさ」の向上が定着率などを改善し、「働きがい」の向上が定着率に加え、労働生産性、仕事に対する自発性、顧客満足度などさまざまなアウトカムの向上につながると考えられます。白書では、具体的な企業の取組例も紹介されており、参考にできそうです。
【参考:「令和元年版 労働経済の分析」】
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_06963.html

 

■今年は早期に「インフルエンザ対策」を始めましょう!

◆今年は早くも流行の兆しあり

インフルエンザは例年12月から3月にかけて流行しますが、今シーズンは早めの注意・対策が必要となりそうです。
厚生労働省が10月4日に発表したインフルエンザに関する発生状況によると、今年は例年より早い定点当たり報告数の増加が見られており、インフルエンザ流行レベルマップを通した情報の提供の開始が早められることとなりました。夏休み明け前後からインフルエンザによる学級閉鎖が行われるなどの例年にない状況も見られることから、同省では、インフルエンザ・ワクチンの早めの手配に動き出しています。
また、今年の国内のインフルエンザウィルスは、ヒトA型のAH1pdm09が73%、AH3亜型が17%、ヒトB型が10%。AH1pdm09は2009年に世界的なパンデミックを起こしたウィルスで、そのときは10~12月に発生のピークがありました。この点からも、今年はインフルエンザの流行時期が早まることが懸念されています。
今後の本格的な流行に備え、「インフルエンザにかからない」、そして「感染を広げない」ための対策を講じることが求められます。

◆感染拡大防止のための企業対策

企業においては、インフルエンザに罹患した従業員が発生した場合に備え、感染拡大防止のために出勤停止期間の基準を明確化しておくことが必要です(インフルエンザは感染症予防法による法的な就業規制の対象ではありませんので、自主的なガイドラインを策定することになります)。一般的に、インフルエンザ発症前日から発症前後3~7日間はウィルスを排出するといわれていますので、その期間は出勤させないことが望ましいでしょう。
社内規程を確認し、必要があれば整備しておきましょう。

◆すぐできる、「清掃」によるインフルエンザ対策

また、簡単ながら効果のある対策として、「清掃の徹底」が挙げられます。インフルエンザは、飛沫感染のほか、接触感染により拡大します。机・テーブル、椅子、ドアノブ、スイッチ、手すり、エレベーターのボタン、トイレのレバーや便座等、職場で人がよく触れるところをこまめに水と洗剤で拭いて清掃しましょう。次亜塩素酸ナトリウム、イソプロパノール、消毒用エタノールといった消毒剤の利用も有効です。

 

高齢労働者の労働災害防止には握力アップ!?

政府は「70歳まで働く機会の確保」に向けた議論を開始し、希望すればすべての人が70歳まで働けるように、企業に高齢者の雇用機会を作るよう努力義務を課す方針を示しました。来年の通常国会に高年齢者雇用安定法の改正案を提出する予定だそうです。
また、「成長戦略実行計画」でも高齢者が能力を発揮し、安心して活躍するための環境を整備するため、ガイドラインの策定等が検討されています。

◆死傷者の25%は60歳以上

雇用者に占める60歳以上の割合が17.2%(2018年)に達するなか、高年齢労働者の労働災害が増加しています。今後、高年齢労働者は、否が応でも増えることになりますが、現状でも死傷災害(休業4日以上)となった人の4人に1人が60歳以上の高年齢労働者です(厚生労働省「労働者死傷病報告」)。

◆握力アップは安全に通じる!?

年齢を重ねるとどうしても体力は低下しますが、特に、握力は全身の筋力を把握するための指標と考えることもできるようです。
高齢者の認知症発症リスクは、身体活動レベルが低いほど上昇する傾向があるといわれています。しかし、65歳以下の中高年層でも、握力が強い人は、脳卒中等の発症リスクが低かったり、認知症になりにくかったりするそうです。また、握力の強い人はストレスに強く精神的にも安定しており、セルフコントロール能力が高いとの研究もあるそうです。握力の低下は、集中力・やる気の低下にもつながるということです。
なお、握力は、部分的に鍛えるだけでは向上しにくく、脚・腰など全身の筋力向上と相関関係があり、握力向上≒全身の筋力向上ともいえるでしょう。

サービス業における労災(特に転倒・腰痛等)の発生が注目されていますが、労働災害を起こしにくい体作りのための指導を、日常の労務管理に組み入れることが重要な時代になってきているのだと思います。企業独自の体力テストを取り入れ、就業制限・就業配慮・業務変更等に役立てているケースもあります。

 

■求人数が増加している「高卒採用」の現状

◆高卒求人倍率が右肩上がり

売り手市場で新卒採用の苦戦が続くなか、近年、若手の人材不足解消のため、高卒採用に積極的に取り組む企業が増加しています。厚生労働省の発表によると、7月末時点の来年3月の高卒予定者の求人倍率は2.25倍(前年同期比0.15ポイント増)で大卒を上回り、1993(平成5)年以来の高水準となりました。

◆高卒採用の特徴

高卒採用は、毎年9月5日から応募書類の提出を開始し、9月16日から採用選考・内定が解禁となります。

また、「1人1社制」という独自の採用ルールがあります。このルールは、大卒と異なり、企業がハローワークを通じて高校に求人を申し込み、生徒は届いた求人票の中から教師と相談の上「1人1社」しか応募することができないということです(秋田、沖縄県を除く)。その後、一定期間を過ぎれば、複数の企業に応募することができます。

「1人1社制」は、複数の企業に興味があっても併願できないというデメリットがありますが、特定の生徒に内定が集まることがなく多くの生徒が内定を得られることになります。また、企業側のメリットとして、内定辞退が少なく、短期間で採用することができます。

◆3年の離職率は大卒以上

一方、高卒採用の場合、企業への直接応募ではないため必ずしも希望する企業に就職できない、自分のやりたい仕事がわからないまま就職をしてしまうことなどが原因で早期離職となってしまうといったことが多々あります。厚生労働省の2015年の調査では、高卒者は大卒者よりも離職率が高く、入社3年で約4割が離職してしまうのが現状です。

◆変わりつつある高卒採用

こうした現状から、「1人1社制」の見直しを求める声が企業側から相次ぎ、文部科学省と厚生労働省は、今年1月に有識者による高卒の採用ルールを見直す検討を始めました。来年の初め頃には結論を出す見通しです。

また、近年では高校生向けの就職サイトの誕生や合同企業説明会の開催など、高校生が主体的に企業を選ぶための取組みが増えています。

これから高卒採用を始めようとお考えの企業は、大卒採用との違いを確認し、今後の動向を注目しながら検討されるとよいでしょう。

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